わたしがまだ小さかったころ、おままごとをして手の平をきった事がありました。
 
借物、偽物、作り物。

 そんなちゃっちゃな料理道具の中に、ひとつだけ本物がまざっていたからです。

 飾りが立派な細い刃物を手にして戯んでいたわたしは、いつのまにか指のあいだを深く切り刻んでいました。

 手の平を真っ赤にして母のもとに帰ると、

 母はわたしを叱りつけてから泣きだし、最後に優しく抱き留めてくれたのを記憶しています。

 痛かったでしょう、と母は言いました。

 わたしはそんなわけのわからない言葉なんかより抱きしめてもらえた事のが嬉しく、母と一緒に泣きだしました。

 藤乃、傷は治れば痛まなくなりますからね―――。

 傷に白いほうたいを巻きながら母さまは言います。

 わたしはその言葉の意味もわかりません。

 だって一度も、私は痛いとは感じなかったのですから。




                        /痛覚残留





















------(以下是翻譯)------





我小時後玩煮飯遊戲時,曾發生切到手掌的意外。

在那些一切都是模仿之物、偽物、虛構之物的小型料理道具中,

混了一把唯一的真物。

我把製作精美的尖銳刃物拿在手上把玩,

不知不覺中,手指被劃了一到很深的傷口。

我帶著滿是鮮血的雙手回到母親身旁,印象中,

母親一開始先是嚴厲的責備我,

後來她哭了起來,最後溫柔地緊抱我。

「很痛對不對?」母親這麼對我說。

比起這句不太能了解意義的話,

我高興的是能讓母親抱著我的感覺,

於是我也跟著母親哭了起來。

「藤乃,傷口治好就不會疼了喔--」

母親一邊替我綁著白色繃帶一邊說著。

但我還是不太了解這句話的意思,

因為我從來就沒有感覺疼痛過。


/痛覺殘留
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